職場・チームでの性格のちがいと伝え方
報告、相談、会議、フィードバック。4つのものさし別に「こう言うと伝わる」「こう言うとすれ違う」を紹介します。相手を決めつけず、伝え方の引き出しを増やすための読み物です。
同じことを言っているのに、伝わらないのはなぜ
「ちゃんと報告したのに、伝わっていなかった」「相談したのに、思っていた答えと違った」。職場のモヤモヤは、能力や努力の不足ではなく、伝え方のくせのずれから生まれていることが多いものです。
4つのものさしは、そのずれを見つけるヒントになります。人と話して考えるか、ひとりで整理してから話すか。気持ちを強く出すか、抑えるか。段取りを先に決めたいか、動きながら決めたいか。気持ち重視か、筋道重視か。
先にお断りしておくと、これは上司や同僚、後輩を「あの人は◯◯タイプだから」と決めつけるための道具ではありません。相手のタイプを当てるより、自分の伝え方の引き出しを増やすことが目的です。同じ人でも、場面や体調で変わります。
ライブ感|相談のタイミングと、会議での話し方
ステージ派の人は、話しながら考えがまとまります。会議でも、結論が出ていない段階で「たとえばこんな案はどうでしょう」と話し出し、他の人の反応を受けて形にしていきます。相談も、思いついたらすぐ席まで行くことが多いでしょう。
スタジオ派の人は、頭の中で整理してから話したい人です。会議中は黙っていても、終わってから「実はこう考えていました」とメッセージが届くことがあります。その場で意見を求められると言葉にならず、考えていないように見えてしまうのが損なところです。
伝わる言い方は、相手に考える時間を渡すことです。ステージ派がスタジオ派に相談するなら、「あとで5分もらえる? 先に資料を送っておくね」。スタジオ派がステージ派に話したいなら、「相談があるので、15時に10分いいですか」と、時間と長さを先に伝えます。すれ違うのは、「ちょっといい?」といきなり話し出して、相手の考えを待たずに結論を迫る形です。
音量|報告の重さと、指摘の受け止め方
フォルテの人は、うれしいことも困りごとも大きな音で報告します。「大変です、トラブルです!」と声が上がるので、周りは緊急度が高いと受け取ります。実際は小さな問題でも、勢いで大ごとに聞こえることがあります。
ピアノの人は、トラブルでも落ち着いたトーンで報告します。そのため、「重大さが伝わらなかった」ことがあります。「実はちょっと気になっていて」と控えめに始めると、聞く側は軽く受け止めてしまうのです。
伝わる言い方は、報告のはじめに、重さを言葉で添えることです。「今日中に対応が必要な件です」「急ぎではないですが、共有です」。トーンが違っても、重さの目盛りが分かればずれません。すれ違うのは、フォルテの人が熱量で、ピアノの人が静かな口調で重さを伝えようとして、お互いに読み違える形です。
演奏スタイル|依頼のしかたと、変更の伝え方
譜面派の人は、仕事の流れが見えると安心します。依頼されるときも、「いつまでに、何を、どの形で」がそろっていると動きやすい。急な変更は、予定の組み直しになるので、負担が大きく感じられます。
アドリブ派の人は、細かいところは動きながら決めたい人です。依頼は「ざっくりこんな感じで」と伝えがちで、詳細は進めながら詰めるつもりです。変更も、状況が変われば当たり前、と軽く伝えます。
伝わる言い方:アドリブ派が譜面派に頼むときは、最初に「期限」「完成の形」「変わる可能性のあるところ」の3つだけ伝えます。「金曜までに、A4一枚で。内容は多少変わるかもしれません」。譜面派がアドリブ派に頼むときは、細かい手順より、ゴールと優先順位を伝えて、途中は任せてみる。すれ違うのは、ざっくり頼まれた譜面派が、聞けずに抱えこむ形です。
音づくり|提案の通し方と、フィードバックの切り口
エモの人に提案を通したいときは、「誰にどんな良いことがあるか」から話すと届きます。数字より先に、現場の人が楽になる、お客さんが喜ぶといった、顔の見える話を。ロジックの人に通したいときは、目的、根拠、手順の順に。気持ちの話は添える程度で十分です。
フィードバックも同じです。エモの人に指摘するときは、まず頑張った部分を具体的に認め、そのあとに直してほしい点を伝える。ロジックの人には、どこがどの基準に届いていないかを具体的に示すと、納得して動けます。
すれ違うのは、ロジックの人がエモの人に「結論から言うと、ここが間違い」と切り出して、相手が内容を聞く前に固まってしまう形。逆に、エモの人がロジックの人に「みんな頑張っているのに」と気持ちで訴えて、「で、具体的には?」と返される形もあります。
会議で、意見を出す・引き出すコツ
会議では、ステージ派とフォルテの人の声が大きくなり、スタジオ派とピアノの人の意見が後回しになりやすいものです。意見がないのではなく、考えをまとめている最中か、割りこむきっかけをつかめないだけのことが多いです。
進行役ができる工夫はいくつかあります。前日に議題を共有する、最初に1分間ひとりで考える時間を作る、順番に一人ずつ聞く、チャットでも意見を出せるようにする。どれも、スタジオ派やピアノの人が話しやすくなり、ステージ派の発想も整理されるので、全員にとって得になります。
発言する側の工夫もあります。ピアノの人は、会議の前に言いたいことを一行だけメモしておき、最初の数分で「一点だけ」と切り出すと言いやすくなります。フォルテの人は、話し終えたあとに「他の見方はありますか」と一拍置くと、場が開きます。
上司・同僚・後輩への伝え方、引き出しを増やす
上司に伝えるときは、相手が知りたい順番を想像してみます。結論を先に聞きたい上司もいれば、経緯から聞きたい上司もいます。迷ったら「結論を一言、理由、次にしたいこと」の順で話し、「経緯も説明したほうがいいですか?」と最後に聞いてしまう手があります。
後輩に教えるときは、自分のやり方を前提にしないこと。自分が譜面派なら手順書を渡したくなりますが、後輩がアドリブ派なら「まず触ってみて」のほうが伸びるかもしれません。「どっちが教わりやすい?」と聞くだけで、教え方の精度が上がります。
同僚には、仕事の頼み方の好みを聞いておくと楽になります。「連絡はチャットと口頭、どっちが助かる?」「急ぎのとき、どう伝えたら気づきやすい?」。タイプを推測するより、本人に聞いたほうが確実で、相手も大切にされていると感じます。
ミスや失敗を伝えるときの、言い方の引き出し
ミスを報告する場面は、タイプの違いが最も出やすいところです。フォルテの人は、報告の勢いのまま「すみません、やってしまいました!」と先に気持ちを出します。ピアノの人は、気まずさから切り出すのが遅れ、報告の時点で時間がたってしまうことがあります。
受け取る側は、まず「教えてくれてありがとう」と一言返してみてください。ミスの内容より先に、報告してくれたことを受け止めると、次から報告が早くなります。そのあと、ロジックの人なら原因と対策を、エモの人なら本人の気持ちを軽く確かめる、と順番を変えると、相手が構えずに話せます。
伝える側のコツは、「事実、影響、これからの対応」の三つを短く並べることです。「資料の数字を一か所間違えていました。まだ共有前です。直して15時までに出し直します」。気持ちの出し方や話し方のくせに関係なく、この形なら、誰が聞いても状況がつかめます。
決めつけず、ひとつだけ試してみる
「あの人は◯◯タイプだから、こう言えばいい」と固定してしまうと、かえってうまくいきません。人は相手によっても、気分によっても、振る舞いを変えます。タイプは、伝え方の最初の仮説として使い、相手の反応を見ながら修正していくものです。
翌日から試せる小さなことを挙げます。報告の最初に、急ぎかどうかを一言添える。依頼のとき、期限と完成の形を伝える。意見を求めるとき、考える時間を渡す。指摘の前に、よかった点をひとつ具体的に言う。どれも、相手のタイプを知らなくてもできることです。
うまく伝わらなかったときも、相手の能力や性格のせいにせず、「伝え方の引き出しをもうひとつ開けてみよう」と考えてみてください。それだけで、職場でのやりとりは少しずつ軽くなっていきます。